本文へ

御遺族との合意書締結について

大阪教育大学教育学部附属池田小学校事件に係る御遺族と文部科学省,大阪教育大学及び附属池田小学校との合意書を平成15年6月8日(日)に締結しました。

合意書(PDF版/25KB)

合意書

前文


 学校は、子どもたちが保護者から離れて学習する場であり、本来最も安全な場でなければならない。「開かれた学校」の視点は重要であるが、それを意識するあまり「安全な学校」という大前提が蔑ろにされることがあってはならない。
 平成11年12月の京都市立日野小学校で発生した児童刺殺事件後の平成12年1月において、文部科学省(当時の文部省)は、附属学校を置く国立大英皇娱乐_棋牌现金网-平台*官网に対し、安全管理に関する通知を発出したが、その通知後においても、平成12年1月の和歌山県かつらぎ町立妙寺中学校における不審者の校内侵入による生徒殺人未遂事件などが発生していた中で、通知の内容を見直すことなく、また、附属学校を設置管理する文部科学省及び大阪教育大学では、各附属学校の安全措置の状況を把握したり、特段の財政措置を講じたりしていなかった。さらに、大阪教育大学教育学部附属池田小学校(以下、「附属池田小学校」という。)においては、先の通知に関して、教職員に対して一度口頭で伝えたにとどまり、それ以外の格別の対応をとっておらず、別紙の事件(以下、「本件事件」という。)当日においても、不審者に対して教職員の十分な対応がなされていなかった。
 このような状況の下で、本件事件において、8人の幼い児童の尊い命が奪われたことは、痛恨の極みである。文部科学省及び大阪教育大学並びに附属池田小学校は、その責任を深く自覚する。
 本合意書は、文部科学省及び大阪教育大学並びに附属池田小学校が、本件事件について真摯に謝罪し、今後二度とこのような事件が発生しないよう万全を期することを誓うとともに、その誓いの証として実効性のある安全対策を掲げ、もって亡児童に捧げるものである。
 以上の趣旨において、文部科学省及び大阪教育大学並びに附属池田小学校は、御遺族との間で、以下の事項について合意した。
 
 
第1条 謝罪
1 文部科学省は、亡児童に謹んで哀悼の意を表するとともに、亡児童及び御遺族に対し、過去に同種の事件が発生していたにもかかわらず、適切な防止策を講じず、安全であるべきはずの学校で、何の罪もない8人の幼い児童の尊い命が奪われたことを、真摯に反省し、衷心より謝罪する。
 
2 大阪教育大学は、亡児童に謹んで哀悼の意を表するとともに、亡児童及び御遺族に対し、附属池田小学校の安全管理に十分な配慮をしなかったため、適切な防止策を講じず、また、緊急事態発生時の対応を教職員に徹底せず、安全であるべきはずの学校で、何の罪もない8人の幼い児童の尊い命が奪われたことを、真摯に反省し、衷心より謝罪する。
 
3 附属池田小学校は、亡児童に謹んで哀悼の意を表するとともに、亡児童及び御遺族に対し、学校安全についての危機意識の低さから、外部からの不審者を容易に侵入させてしまい殺傷行為の発生を未然に防止することができなかった、危機通報、救助要請、組織的情報伝達、避難誘導、救命活動、搬送措置が十分にはなされなかったため、殺傷行為の継続を許してしまい、また結果発生を最小限に止めることができなかった、それらの結果により、何の罪もない8人の幼い児童の尊い命が奪われたこと、及び、事件後の対応に不備があったことを、真摯に反省し、衷心より謝罪する。
 
第2条 損害賠償
  国は、本件事件において、附属池田小学校の安全管理が十分ではなかったことについて、御遺族に対して損害賠償金の支払義務を認め、御遺族及び国は、本合意書に基づき、具体的な賠償金額を記載した合意条項を別途作成?締結するとともに、本件事件において、この合意条項に定めるもののほか、何ら債権債務がないことを相互に確認する。
 
 
第3条 再発防止策
1 文部科学省
 御遺族の協力を受けながら、平成14年11月にハード面の防犯対策の報告書及び同年12月にソフト面の危機管理マニュアルを作成し、既に全国の学校の設置者及び各学校等に配布したところであり、これらのマニュアル等を全国の学校に普及させていくため、防犯や応急手当等についての訓練等を実施する「防犯教室」の開催を推進するとともに、学校施設の防犯対策に関する手引書の作成、学校の施設整備指針の改訂等を行う。また、「開かれた学校」の推進に当たっては、学校における子どもたちの安全確保が絶対条件であることについて、周知徹底を図っていく。さらに、各学校における安全管理の取り組みを定期的に調査し、その結果を公表するとともに、マニュアル等について、必要に応じて、外部の有識者の協力も受けながら見直しを図る。 そして、このような学校防犯を含む学校安全施策について、対症療法的な一時的対策にとどまらず、組織的、継続的に対応する。
 
2 大阪教育大学
 全教職員の危機対応能力の向上を図るとともに、教員養成機関として、学校安全に関する実践的な教育?研究を充実し、適切な危機管理や危機対応を行える教員を養成する。
 附属学校園における安全管理の状況について、定期的な実態調査を実施し、点検、見直し、改善を継続して行い、事件?事故の未然防止を図る。
 また、平成15年4月に新設した「学校危機メンタルサポートセンター」において、学校の安全管理に資するための全国共同利用施設として、国内外の危機管理の取り組みや実際の学校危機事例等の調査研究、情報の収集?分析?発信を行う。同センターの機能をより実効性のあるものとするため、同センターの人的物的資源を充実して行く。
 
3 附属池田小学校
 児童の学校生活上の安全保障を徹底するため、校務分掌として設置された学校安全部により不審者対応訓練を定期的に実施するなど、外部からの不審者を容易に侵入させることのないよう人的物的措置を講じる。また、PTAと連携し、登下校時や放課後の安全確保についても努める。
 さらに、学校単独での安全対策にとどまらず、警察、消防、池田市をはじめとする近隣の自治体と連携し、総合的な児童の安全対策の推進に努める。
 文部科学省が作成したハード面の防犯対策の報告書、ソフト面の危機管理マニュアルをもとに本校独自の実効性のある危機管理マニュアルを作成、実施し、必要に応じ随時改訂を行う。
 そして、毎月8日を「安全の日」と定め、上記危機管理マニュアルの内容が確実に実施されているかを責任を持って点検していく。
 これらの安全管理への取り組みのほか、児童の学習活動への取り組みとして、道徳?総合的な学習の時間等において「命の大切さ」を感じ取る教育内容の研究をさらに推進し、個々の児童が安全な社会の担い手となる教育に努める。

別紙 「附属池田小学校事件の概要」